てぃーだブログ › 世界をHappyにするStoryを描こう › タラターナ 第1話 › 【第一章 タラターナ国のカエル】
第一章 タラターナ国のカエル   

 ひかりちゃんが、初めてタラターナ人を見たのは、学校の帰りでした。
 といっても、最初から、それがタラターナ人だと、気づいたわけではありませんでした。最初はね、「あれ?子猫かな?」と思ったんだって。

 どうしてかというと、帰り道の脇に、いっぱい生えている雑草のうち、いちば~ん背の高いねこじゃらしだけが、風もないのに、ヒョコヒョコと頭をふるように、動いていたからです。

 その日は、風もなくて、とってもいいお天気で、だから他の雑草は、しずかに澄まして立っているだけだったのに、そのねこじゃらしだけが、踊っているみたいだったんだって。

 それで、ひかりちゃんは、その下に子猫でもいるのかな、と思って、足音を立てないように、そ~っと近づいてみたそうです。
 そしたらね、そこには、猫もねずみもへびもいなかったって。

 そう、おばちゃんが小さい頃は、おばちゃんちのうちの近くには、のら猫だって、ねずみだって、へびだって、いっぱいいたんだよ。

 それでね、風もないし、子猫もいないのに、そのねこじゃらしがヒョコヒョコって動いているものだから、おかしいな~、何だろうって思って、ひかりちゃんは、そこにしゃがみこんで、じーっと見てたんだって。

 そしたらね、ちっちゃなちっちゃなエメラルド色のカエルが、ねこじゃらしに両手でぶら下がっているのに、気がついたんだって。

 エメラルド色っていうのはね、もうすぐあったかくなるでしょう。そしたら、お庭や幼稚園の木から、なつきちゃんの耳たぶみたいに柔らかい黄緑色の葉っぱが出てくるでしょ。あの葉っぱの色が、エメラルド色だよ。

 それでね、そのカエルは、何をしていたと思う?逆上がりの練習をしてたんだって。

 へぇ、あおいちゃんも、もう逆上がりができるの?幼稚園で、鉄棒習うんだ。すごいね。
 おばちゃんたちが子どものころは、逆上がりを習うのは、小学校の4年生になってからだったんだよ。だから、ひかりちゃんは、カエルが何をしてるかわからなかったんだね。そこで、こんなふうに大きな声で聞きました。

「ねぇ、何してるの?」

 カエルはね、びくっとして、ねこじゃらしにぶら下がったまま、じーっと動かなくなったんだって。しょうがないから、ひかりちゃんも、そのまま、じーっと動かないで、カエルを見てたんだって。

 そしたら、カエルの腕が、少しずつプルプルプルってふるえはじめて、とうとうポトンって地面の上に落っこちてしまいました。ひかりちゃんは、さっと手を伸ばして、カエルをつかまえようとしたんだけど、カエルはとってもすばしこくて、あっと思ったときには、もうどこかに逃げてしまっていたんだって。

 ひかりちゃんは、おうちに帰ってからお母さん、熊本のおばあちゃんのことだよ、に、そのことを話しました。そしたら、ひかりちゃんのお母さんが、

「ああ、それはタラターナ人だね」

って、教えてくれたんだって。

 タラターナ人はね、タラターナの国に住んでいます。タラターナの国はね、あおいちゃんやなつきちゃんが、いつもお外で遊んでいるでしょう。あの、地面の下にあります。

 そして、あおいちゃんとなつきちゃんが、地面に足をつけているみたいに、タラターナ人も地面に足をつけています。だからね、あおいちゃんやなつきちゃんとタラターナ人は、地面をはさんで、靴の裏と靴の裏をくっつけあってるみたいな感じになっているんだって。

 え?よくわからない?ちょっとそこの、そう、そのお絵かき帳を持ってきてごらん。こんな感じで立ってるんだよ。

【第一章 タラターナ国のカエル】



 そうね、逆立ちしてるみたいだね。でも、タラターナ人にとっては、サカサマなのがふつうだから、サカサマに落っこちたりはしないんだよ。

 タラターナ国は、私たち人間の国によく似ています。タラターナ人も、人間によく似ています。違うところは、タラターナ人は、とってもとっても、小さいっていうこと。そうだね、大人でも、あおいちゃんやなつきちゃんのお母さん指くらいの大きさしかないんじゃないかな。

 それとね、お空のかわりに、海があるんだって、頭の上には海があって、その中で太陽が輝いているんだって。とっても不思議だね。

 タラターナ人は、ときどき用事があって、人間の国に来るときがあります。そんなときは、カエルとか、チョウチョとか、カタツムリとかに、姿を変えています。あおいちゃんやなつきちゃんも、二本足で立って急ぎ足で歩いているカマキリとか、ブロック塀の上で気持ちよさそうに日なたぼっこをしてるカタツムリを見たことがあるんじゃない?

 そうそう、熊本のおばあちゃんちで、とっても仲良しの赤トンボを見たよね。あれも、たぶん、タラターナ人だったんじゃないかな。

 タラターナ人が、ときどき人間の国にやってくるのは、人間の国にしかないモノを、ほんの少々拝借するためです。

 拝借っていうのはね、え~っと、借りるっていうこと。

 たとえばね、雨が降ったあとの道路に、水たまりができてるでしょ。そこに車の油が浮いて、虹色に光っているのを見たことがあるでしょう。あの虹色を、ちょいと袋に入れて持って帰って、タラターナの国で虹を作っているんだって。

 そして、雨上がりにお日様の光がさっとさしたときに、人間の国の空に大きな虹をかけてあげるんだって。それがタラターナ人のお仕事で、借りたものを返すっていうことでもあるんだって。

 他には、そうだね、おばあちゃんちの前の道、夜になると真っ暗になるけど、ところどころ電気がついていて、明るいところもあるでしょう。あの電気のことを外灯っていうんだけどね、あの外灯って、どういうわけだか、ときどきバチバチって火花が飛ぶときがあるんだよ。それは、タラターナ人のシワザ。

 そのお仕事は、とっても危険だから、タラターナ人の中でも、勇敢な大人にしかできないんだって。だって、外灯の高い柱をヨイショヨイショって、いちばん上までのぼって、背中にかついできた細長い針金で電球をツンツンって突っついて、わざと火花を飛び散らせるんだから、勇気のある人にしかできないよね。タラターナ人は、あの火花を集めて持って帰って、稲妻を作っているんだよ。

 人間の国に雨を降らせるのも、雪を降らせるのも、風がふくのも、春になったり、夏になったり、秋になったり、冬になったりするのも、全部タラターナ人の仕事なんだって。すごいよね。

 ところが、あるとき、タラターナの国に、大変なことが起こりました。それはね・・・。


あれ、なつきちゃん、いつの間にか寝ちゃったね。あおいちゃんも、もう上のおめめと、下のおめめがくっつきそうだね。それじゃあ、続きは、明日お話しようね。

 そうだね、明日、寒くならないように、タラターナ人にお願いしておきましょう。

 「タラターナ人さん、明日寒くしないでください。雪を降らせないでください。お願いします。」

 これで大丈夫だよ。ぐっすりおやすみなさい。また、明日。





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